神話伝承論

以前から、受講希望していたスクーリング「神話伝承論」ですが、日程が合わず、今回、わたしにとって、最後の最後の受講となったのです。

 これを受講して、1か月後の成績評価が合格の60点以上の通知がくれば、単位満了で、はれて卒業です。

 

この「神話伝承論」の講義は、数ある奈良大学のスクーリングのうちでも人気が高いと聞きます。

 先生は、メディアによく登場する上野誠教授で、万葉集に関する著書多数の万葉学者として知られています。

この講義は、本当に受講して良かったと思えるものでした。講義の進め方、内容、教え方、先生と聴く学生との一体感、先生とゼミの学生との協調性、そして学外授業など、どれをとっても素晴らしいものでした。

 最初のスクーリング実施要項からして、万葉集の歌からはいります。

秋さらば 今も見るごと 妻恋ひに 鹿鳴かむ山そ  高の原の上 

(長皇子 『万葉集』巻1の84)

現在の奈良大学の地が、古代と関連していることを述べておりまして、

 「ようこそ奈良大学へ、ようこそ佐紀へ、高の原へ本年度、授業を担当する上野誠です。」とあります。

そして、

力不足ではありますが。濃縮した授業で、「スクーリングに来てよかった」と思われる授業を心がけますのでご協力よろしくお願いします。

丁寧に、そして、へりくだって、このように記述されていました。

 最初に教室に入ってきて、全員のところを回り、挨拶をされます。「お暑うございます。」とか、「体調を考慮して」など話しかけながら、これは三日間、毎日ありました。

 そしてこれは、毎回やっているようですが、最年長、最年少の方に記念品を贈るというものです。最年長は、男性81歳、最年少は女性19歳でした。何と幅広いことか。

 最年長の男性は、あとで話したのですが、小田原からの方で、自分では、あまり齢だとは感じていないそうです。幾つになっても、学ぶことは大事であることを教えられます。

また、最北端、最南端から受講されている方にも記念品が贈られました。

 最北端は、北海道で釧路1名、札幌2名でした。最南端は大分の方でした。

記念品は、扇や奈良県の写真のようでした。

先生も、「この暑い夏に、遠方の方も、学ぶために来られていることは、本当に尊いと思います。」と述べられていました。

 

このように、様々な人が、日本のあちこちから歴史好き、文化財好きが集まり学ぶ、奈良大通信教育学部文化財歴史学科、本当によい学び舎であると感じます。

卒業する人は、二割程度と聞いておりますが、どういう成果を出すかは、その人自身の満足度で決まるのではないでしょうか。

 

さらに先生は、このスクーリングの特別手当を還元するようなことを云われ、記念品ばかりでなく、奈良のお菓子を受講生全員に配ります。

初日が麦縄菓子という小麦粉の練り菓子で、非常に硬くて、不味いということでした。後で調べたら、有名な三輪山のソーメンのルーツで、奈良時代に中国から伝わったとありました。

そのあとに、「みむろ」という最中も戴きました。これも三輪山大神神社に因んだもののようです。

どちらも、お土産屋では、見たことはないですが、今度探してみます。 お菓子は、先生のゼミの学生さんたちが配ります。

 

この講義には、先生を支える6人のゼミの学生さん(主に院生)がおります。連絡事項などを伝えるときには、「壇上から失礼します。」と必ず声をかけ、礼儀正しく先生との協調もとれています。

先生が黒板いっぱいに書くと、サッと出てきて綺麗に消します。

 

また、この講義は、「トイレ休憩なしで進みますので、行きたい人はご自由に行って下さい。」ということでしたが、大事な部分では、「顔をあげて下さい。」とか「ここは波線とか棒線を引いてください」とか数々の指示が出て、トイレに行く暇もないような濃厚な講義です。

この講義の進め方にも工夫されています。

古事記』についてですが、3っつのパート

1.神話資料として古事記をどう読むか。

2.国土形成神話を読む。

3.黄泉行神話を読む。

に、分かれたテーマをそれぞれ10~20項目程度のチェックボックスがあり、説明された項目に、チェック記入していくと、各日の進行状態が分かるようになっています。

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真福寺岐阜県真言宗の寺院)収蔵の国宝・『古事記』。

3日間のスクーリングのはじめに、拍子木で1本締めみたいな事をしたのにも驚きました。

 令和元年はじめての「神話伝承論」のスクーリングということで、気合が入っていたのでしょうか。いつもこのような調子なのでしょうか。

 

午前、午後の終わり頃になると、課題が提示されます。

提出すると、ゼミの学生から模範解答が渡されます。

午前の課題は、先生が昼休みに、おにぎり片手に全ての回答を見るそうで、午後一番に返却されます。

先生は、各自の理解度、レベルを見るためで、どうしても不足している方には、もう1度受けてもらいますとのことでした。

 

内容について少しふれますが、『古事記』の序文の内容を確認して、国土形成神話、黄泉行神話について解説し、神話のありようを学ぶといった講義です。

 

例えば、以下1日目午前中習った後の課題です。

 古事記』を読む場合に、『古事記』という書物の性格をどのように理解したらよいか。

という問題であるが、なかなか事前の学習では解答は難しく、先生の講義を聞かなければ、書けないと感じました。

そして最後の課題が、「全体を通じて上野が最も伝えたかったことは何か」ということでした。

 

受講生は皆、熱心に、真剣に受講していますが、先生の講義の進め方や説明の仕方は、工夫されているようです。

興味をもたせるため、同じフレーズを繰り返したり、美声で歌を詠んだり、幅広い交友関係からの話題とか、ジョークを随所に交えたりと、なかなか飽きさせません。時間はすぐに経ち、見事な講義でした。

 

前述にメディアによく登場すると書きましたが、NHKの「チコちゃんに叱られる」の第1回に出演していることを、先生自ら話されていました。絵本みたいのが発行されており、「さよならをするとき、なぜ手をふるの」というのが出題で、チコちゃんの答えは、「古(いにしえ)から、袖に魂が宿ると信じられて来たから」というものでした。

 

その時に出演して、解説されたようです。

日本人の手を振るジェスチャーが、確認できる最古の史料は、万葉集にあり、「振袖」という言葉で表現されていた、古来日本では服の袖に霊魂、魂が宿ると信じられてきたようです、とのコメント。

万葉集を持ち出してくるとは、さすがの回答でした。

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NHKのHPから

 

三日間、座学ではきついので、しっかり二日目の午後に学外授業を組み込んでいます。

平城宮跡に行きましたが、これもなかなか見応えのあるものでした。

この様子は、後ほど。