コロナと東洋医学

 現在、新型コロナは第2波の最中で、勢いが衰えたとはいえまだまだ感染者が多くいます。同じコロナに感染しても、無症状の人や重症者、軽症で済む人など個人差があるようです。

それは、コロナの感染力に対して個人が持っている自然治癒力、免疫力、抵抗力などとのバランスが大きく影響していると感じます。

コロナの有効な治療薬やワクチンが出来ていないことから考えますと、如何に感染しないかという事になります。

 東洋医学の考え方では、病気を未然に防ぐため、日頃から自然治癒力、免疫力をつけ、心と体を正常な状態を保つことです。

これは容易な事ではありませんが、基本となるのは、「養生」です。規則正しい生活、適度の睡眠と運動、調和のとれた食事、休養などなど基本的なことですが、多忙な現代人にとっては難しいことです。

 養生と云えば貝原益軒ですね。『養生訓』を再度読み直してみます。

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貝原益軒

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『養生訓』

 総論では、「人間とは」から始まり両親、まわりの人たち、自然の恵みに感謝の心が綴られています。

そして寿命は自分自身が決めると云い、人の生き方を説き、節度を持った生活を続ければ長命でいられると。

そして、平常心が一番で常に平静な気持ちでいるのが養生の最上な方法で、養生の四要は、「怒らず、心配せず、口数を少なくし、欲を少なくする」とのこと。

「飲食」に関する事柄が多いのですが、「人は飲食により成り立つ」から始まり、食慾を抑える、薄味を心がける、腹八分など節制する言葉が並び、旬なもの、新鮮なものを食べるのが良く、食事とは養生の基本であると云う。

そして、根底にあるのが「こころと体」の関係で、重要さが語られています。心は身体の支配者であるから、心を平静にすると身体にも良いということです。

 鍼については、「鍼の効用は、血液の流れを整え、胃腸の働きを戻し、手足の頑固なしびれを取り除く。また高ぶる気持ちを抑え、気力をつけさせ、全身に力を導き出す。」と云っています。

しかし「急病に用い、薬や灸よりもはやく回復させることができる。急病でないのに鍼を用いると、逆に元気がなくなる。」と云っており、自然治癒力、免疫力を高めることに否定的です。

 わたしは身をもって体験していることですが、鍼灸で疾患が治癒しても、その後、継続して治療を受けている患者は、健康でいることから、東洋医学予防医学であるとも思っています。

貝原益軒は、儒学者であり、そして、中国明の李時珍の著した薬学書『本草綱目』に訓点を付け、自らの経験から記述を加えた『大和本草』を1709年に発行しています。

薬学、灸には精通していますが、鍼に対しては専門ではないと思えますが、どうでしょうか。

ともあれ、『養生訓』は一度は読んでみる価値があると思います。

 

また、東洋医学に「未病治(みびょうち)」の考え方があります。「いまだ、やまざるを、なおす」は、病気が現れる前に施術をして自然治癒力、免疫力を高めるということです。

治療者に関して、中国唐の孫思遡は『備急千金要方』に次のように書い ております。

上医は、いまだ病まざる病を医し、

中医は、病まんと欲するの病を医し、

下医は、すでに病める病を医す。

また、「上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を 医す」ともあります。

なかなか蘊蓄のある言葉であると感じます。

                              おわり