5月に長崎県の対馬に関するニュースが、2件新聞紙上に取り上げられました。一つは、対馬博物館が開館と、もう一つは、対馬のトンボ「緊急指定種」にという、何れも興味深いニュースです。
対馬は、古代から大陸と日本の橋渡しをしてきた島です。以前から、このブログに国書偽造など取り上げてきましたが、対馬に関する2年前のブログを載せておきます。
古代から大陸の窓口「対馬」 - クマケア治療院日記 (hatenablog.com)
対馬博物館は、対馬市厳原町にあり、既に4月30日に開館したようです。読売新聞紙上に、「日朝交流歴史資料ずらり」という見出しがありました。同館は、対馬の歴史や文化を発信しようと、県と対馬市が整備した3階建てで、「博物館ゾーン」と「交流ゾーン」の2棟で構成されています。
対馬藩主だった宗氏ゆかりの資料「宗家文庫」8万点を中心とした11万2000点を収蔵して、そのうち対馬島内の遺跡出土品、仏教美術、朝鮮通信使関連など約600点を展示しています。
「博物館ゾーン」には、古代から近現代までの歴史を伝える平常展示エリアがあります。三根遺跡や金田城跡など島内各地で出土した土器片や、朝鮮国信使絵巻の実物、日本と朝鮮半島のデザインが混ざり合った梵鐘などです。
島中部にあった清玄寺ゆかりの梵鐘は、銘文から宗氏の注文で筑前芦屋の工人が、1469年に鋳造したことが分かりました。取り付け部分の竜頭は双頭の竜があしらわれた日本式、胴体は朝鮮半島式の天人や竜の浮彫がデザインされた日朝混合様式で、国境の島を象徴する文化財です。
江戸時代の対馬藩は、朝鮮王朝が徳川将軍に派遣する外交使節(通信使)の窓口を担ったため、宗家文庫には膨大な外交資料が含まれます。
朝鮮の通訳、朴俊漢の書簡は、対馬藩の通訳小田幾五郎に宛てたもので、当時の公式文書は漢文表記ですが、現場ではハハングルが用いられていたことが分かります。
また、日本と朝鮮の中間に位置する対馬藩は地理的条件から、経済を朝鮮との交易に依存していた背景があります。朝鮮との国交回復のために使用した「徳有隣」印や、「為政以徳」印などの偽造印の複製が展示されています。
「交流ゾーン」は、ワークショップができる体験学習室や昆虫標本などが見られる講座室を備え、ギャラリーやミュージアムショップも設けられています。
以前、対馬仏像盗難事件があり、2体の仏像が韓国に持ち去られました。対馬博物館は、対馬市内に点在している文化財を一括して管理することになり、このような盗難事件なども無くなると思います。尚、仏像の2体のうち1体は、戻っていません。
そして、もう一つのニュースは、対馬のトンボ「緊急指定種」に、というニユースです。環境省が、長崎県の対馬に生息するトンボの一種「チョウセングンバイトンボ」を、種の保存法に基づく緊急指定種に指定したというものです。
このトンボは、全長3~3.7cmという小さなトンボで、朝鮮半島や中国などに生息していることが知られていました。
昨年、国内では初めて対馬で見つかり、今年3月に専門誌で報告されたということで、発見して撮影した方は、感激でしょうね。
緊急指定種とは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関し、特にその保存を緊急を要する種について、生きている個体の捕獲、販売などを禁止する緊急的な措置です。指定期間は、5月21日から3年間です。 緊急指定後は、生物学的知見を集積し、国内希少野生動植物種への指定の要否を検討するようです。
近縁のグンバイトンボは、中足と後足の白い葉っぱのようなものが、軍配状に広がっていることから、この名前がついています。関東から西の本州、四国、九州に生息しています。
チョウセングンバイトンボは、このグンバイトンボと同様ですが、雌雄ともに腹部第10節が黒色で、頭部の後頭条が左右に分かれる点、オスの中・後脚の跗節が白色となる点が区別点として挙げられています。写真を見ても区別がよく分かりません。
それにしても対馬はツシマヤマネコといい希少な生物がいますね。大陸に近いため、日本本土にいない生物が、まだまだいるということでしょうか。対馬が近くにあれば、直ぐにでも行きたいところです。
参考資料:読売新聞
対馬博物館ホ-ムページ
環境省ホ-ムページ
おわり