歴史と風情が広がる中野区「東光寺」奇跡のしいの木

 西武新宿沿線の寺社散策が更に続きます。「上高田氷川神社」を後にして北の方向に数分、東京都中野区の「東光寺」に向かいます。真言宗豊山派の寺院です。

 

東光寺(とうこうじ)

    山号:日照山

  院号阿弥陀

  寺号:東光寺

  宗派:真言宗豊山派

  開山:秀範

  創建年:不詳

    本尊:薬師如来

  札所:豊島八十八箇所霊場八十七番札所

 

東光寺の縁起

  建年代は不詳ですが、開山第一世法印秀範和尚で、江戸時代初期に創建されたと伝えられます。その後、五世法印宥真和尚を法流初祖として新義真言宗となり、その三世(七世)法印満盛和尚の代には、明和年間に本堂及び庫禅・台所を構築し寺院としての規模と機能を新たなものとしています。

 昭和20年5月の戦災によって、本尊薬師如来・脇侍・過去帳及び数領の法衣以外の一切を焼失、現在の構築・什物類はすべて戦後の成立です。

 

山門

 上高田の北側の住宅街にある寺院です。山門の前に左側が墓地で参道が続きます。「真言宗豊山派 日照山東光寺」と刻まれた現代的な寺号標のような石碑があります。

 

墓地入口の六地蔵です。

 

 更に参道を進むと東光寺の山門です。

 

 山門を潜ると境内は広く、真っ直ぐ先に本堂で右側に庫裡、左側に大師堂です。地形的には東側に妙正寺川があり、寺院の西側が墓所や境内の傾斜地となっており、山裾の雰囲気があります。

 

西側。

 

本堂

 参道を進み本堂へ向かいますが、途中左側に「慈命観音像」などがあります。

 

 慈命観音は、理想的にあの世へ導いて頂けるようです。

 

 左側には摩尼車、右側に龍の吐水です。

 

更に進みます。

 

本堂です。

 

 本堂正面。扁額は無く、賽銭箱に寺紋の輪違い紋。本堂の前に立つと、読経が聞こえてきます。少し驚きましたが人感センサーが作動して、録音が流れるようになっているようです。

 

左右からの本堂。雨樋が天水受けに直結する構造で初めて見ましたが合理的です。

 

 そして、本堂前に石仏、石碑などが多数あります。

如意輪観音像。

 

 苔で覆われていますが、よく見るとカエル像。

 

その他石仏、石碑。

 

大師堂

 本堂の左側に「大師堂」があります。

 

大師堂と扁額遍照金剛」。

 

その前に立つ弘法大師像。

 

稲荷神社

 大師堂の左側に稲荷神社があります。

 

 境内の東側は一段高くなっています。石段を上がると祠、お狐様が鎮座しています。

 

石仏、石碑群

 境内の左側には、多数の石仏、石碑があります。元々この寺院に存在しないで行き場を失った石仏もあるようです。

 

 祠に入れた石仏ですが、風化が進んで残念です。

 

石仏群です。

 

 一番右の舟型光背型の「聖観音立像」。左上に造立年の天明三年(1783)の文字が刻まれています。

 

 左隣には大きな「笠付角柱型庚申塔」があり、造立年は元禄10年(1697)。青面金剛像と邪鬼、三猿が描かれるがやや風化が進んでいます。

 

他にも石仏、石碑が数多く並んでいます。

 

龍神様の池

境内の入り口に近い所に寳蔵(ほうぞう)大龍神の池があります。

 

 よく管理されていて綺麗な池の中には大きな錦鯉が勢い良く泳いでいます。古代中国の故事に「急流の滝を登りきる鯉は登竜門をくぐり天まで昇って龍になる」という登竜門の故事に因んでいると感じられます。

 

 御朱印

 最後に御朱印です。本堂の右側の庫裡にて御朱印を頂きました。

庫裡の近くに手水鉢がありました。遅ればせながらお清めします。

 

庫裡と内部。

 

御本尊薬師如来御朱印

 

おわりに

 今回の東光寺は、思った以上に境内が広く、妙正寺川のほとりであるため傾斜地をうまく利用した伽藍の配置があり、見応え充分の寺院でした。

 東光寺は、西武新宿線新井薬師前駅」より徒歩数分の中野区上高田北側の住宅街にある寺院です。創建年代は不詳ですが、江戸時代の初期に上高田村の農民達の菩提寺として創建されますが、戦災で建物は全て焼失したとのこと、よく現在まで復興したと驚きます。しかも江戸時代の庚申塔や観音石仏などもあり近隣の上高田にあった石仏なども移しここを安住の地としています。 

 建築物は全て戦後になってから再興されたものですが、全体的に近代的な造りの寺院となっています。

 また、中野区内平和史跡に指定されている「東光寺のしいの木」があります。「山の手大空襲で、しいの木に焼夷弾が落ちて木が枯れましたが、根が生きていたので新しい芽が出て成長し、大きな枝を広げて朽ちた大木の幹を抱き支えるかのように、生き生きと天に向かって伸びています。」(中野区ホームページに拠る)

稲荷神社に向かって左側にあります。

 

 住宅街とはいえ、この寺院の場所は大きな通りから離れており、境内は整然と綺麗な佇まいでした。寳蔵大龍神の池や庭園、竹林といった寺院の風情も感じられ気持ち良く参拝することが出来ました。有難う御座います。

                                 以上