「もず」という鳥の名前はよく聞きますが、漢字で書くと「百舌鳥」と書きます。
読み方は2文字なのに漢字が3文字とは不思議です。
去年の夏、仁徳天皇陵を巡りましたが、この仁徳天皇陵の古墳を含む「百舌鳥・古市古墳群」をユネスコが世界文化遺産として登録しました。
この見聞録は、以前ブログに載せております。
https://kumacare.hatenablog.com/entry/2019/08/05/162041
平安時代の律令制社会の法令集『延喜式』では、この古墳を「百舌鳥耳原中陵」(もずのみみはらのなかのみささぎ)と命名し、現在は宮内庁が管理しています。ここで既に「百舌鳥」を「もず」と読んでいます。
そして仁徳天皇陵に近い駅名が百舌鳥駅です。ここにも百舌鳥という言葉が出てきますが、百舌鳥とはこの辺の古代からの地名でしょうか。
日本書紀に有名な話があります。
「仁徳天皇が、河内の石津原に出向いたところ、鹿が走り出て倒れて死んだ。調べてみると、鹿の耳から百舌鳥が飛び出し、鹿は耳の中を食いさかれていた。このことから、この地は百舌鳥耳原と呼ばれるようになった。」ということです。
随分古代から百舌鳥と云われていたのですね。
話は戻って鳥の百舌鳥のことです。
百舌鳥は、中国東部から南部、朝鮮半島、ロシア南東部と広く分布していて、日本には北海道はじめ全域におります。留鳥として周年生息し、秋季になると南下し標高の低い場所へ移動し越冬します。
全長20cm位で、眼上部に眉状の筋模様が入っていますが、以前ブログに載せたガビチョウに似たような鳥です。
ガビチョウは、他の鳥の鳴き声の真似がうまく長い時間鳴いておりますが、この百舌鳥も名前のとおり鳴き真似がうまいようです。
鳴き真似がうまいので百の舌を持つ鳥という意味で、和名の由来が「 百舌鳥」と漢字表記されたと考えられています。
わたしは、百舌鳥の鳴き真似を聞いたことがありませんが、ガビチョウのコジュケイの鳴き真似を聞いたことがあります。驚きました。大きな声で鳴くのですが、「チョットコイ、チョットコイ」とそっくりです。
因みに多種多様な鳴き声を出せるのはオスだけです。
モズに関する言葉で「モズの早贄(はやにえ)」と云われる有名な言葉があります。
百舌鳥は捕らえた獲物を木の枝に突き刺したり、木の枝股に挟む習性をもっており、秋に初めての獲物を生け贄として奉げたという言い伝えからそう云われています。
この習性の理由として、歌の魅力を高める栄養食説、餌の少ない冬季の保存食説、縄張りの主張説、体が小さいので一度獲物を固定して食べる説、とりあえず突き刺す説等々色々な説があります。
また、「百舌鳥の高鳴き」という言葉もあります。
秋から11月頃にかけて「高鳴き」と呼ばれる激しい鳴き声を出して縄張り争いをし、縄張りを確保した個体は単独で越冬するという、鳥の世界もやはり厳しいのですね。
百舌鳥に関する言葉が「百舌勘定」とか「百舌の草潜(くさぐき)」などまだまだあります。
このような百舌鳥と関連ある言葉が数多くあることで昔から日本人との関わりが深いことが分かります。
それにしても、この習性や生態からくる言葉は、なかなか気性が強く攻撃的な感じのする鳥ですが、カッコウに托卵されることもあることから、自然界はバランスが取れているようです。
おわり