「女医明妃伝」

華流の連続ドラマを初めて見ましたが、允賢(いんけん)という中国・明の女性医師で中国四大女医の一人の物語です。

 

女性の身分が低く医学に携わることも禁じられていた時代に、女性のための医学制度を確立し、彼女が残した「女医雑言」は後世の中国医学に大きな影響を与えたのです。

 

女医允賢を巡る二人の皇帝との恋愛模様がストーリーのメインです。

それに東洋医学、怪しげな祝由という医術、疫病との闘い、明とオイラトとの争い、宮廷内での陰謀など盛り沢山の内容です。

ある程度史実に則って作っているようで、二人の皇帝とは、正統帝(祁鎮きちん)と景泰帝(祁鈺きぎょく)の兄弟です。

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第6,8代皇帝 正統帝(祁鎮きちん)

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第7代皇帝 景泰帝(祁鈺きぎょく)

ドラマの時代は、モンゴル系民族の元から代わって、15世紀半ばの漢民族の明の時代です。

朝鮮半島では、朝鮮王朝のハングルを創った大王世宗の時代、日本は室町で、幕府の統治が安定しなかった時代です。

 

東洋医学は、一般的に漢方、鍼灸、養生ですが、中国は「医食同源」の考え方が古代から現在まで根底にあるようです。

 

ドラマでは、オイラトと戦いとなり、皇帝自ら参戦した兄の祁鎮は、戦い(土木の変)に敗れ、允賢とともに捕虜となります。

そこでの治療には驚きました。

オイラトとは、15世紀から18世紀にモンゴルと並ぶモンゴル高原の有力部族連合で、エセンが首長のとき、オイラトの最大版図を築きました。

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エセン・ハーン時のオイラトの版図

そのエセンが、雷に打たれ意識不明となるのですが、允賢がエセンの舌に鍼を打つも効果がなく、仕方なく自分の歯で、エセンの舌を噛むと意識を取り戻すというのがありました。

また、エセンの妹トブハが狂犬病に罹るのですが、允賢は、噛まれた傷口に脳髄を、妹にはゴキブリをすり潰し、酒と混ぜて飲ませると無事に快方に向かうのです。

 

東洋医学とは少しかけ離れていると思うのですが、吐血し倒れてしまう皇帝祁鎮が回復しないので、モンゴルの古い治療法で「牛の腹を裂き、その中に祁鎮を詰め、血気を移す」という場面もあり、これも医学なのだと感心しました。

 

疫病の話もよく出てきます。

感染者を見ると「黒死病(ペスト)」の症状がみられることに気付いた允賢は、これには「大黄」という薬が有効だという。確かに大黄は、薬用植物です。

黒死病の蔓延はネズミのせいだと、ネズミの駆除をさせ収まるのです。

允賢は全てを知っているのですね。コロナなら允賢はどう治すのでしょう。

 

世の中には薬では治らない病気も多い、そこで「祝由」で心の病気を治すという場面もありました。

「霊符や祈祷をまやかしだと言う人々もいる」が、仙術的な治療も東洋医学なのです。

允賢は、何かと口を出す皇太后に「目の毒を足に移す術」で、祝由を使っています。

 

物語の最後のほうで、皇帝祁鎮がオイラトに捕虜になっていた時、弟の祁鈺が皇帝になるのですが、その皇后が允賢を陥れようと「金剛石の粉」を混ぜたものを飲ませようとするのです。

しかし誤って祁鈺が飲んでしまいます。金剛石とはダイアモンドです。

 

祁鈺は大量の血を吐き、腹痛を訴えますが、治療法はありません。允賢が、ごま油で吐血できるという方法を導き出し快方に向かうのです。

しかし、全て排出できたわけではなく遂に皇帝祁鈺は死んでしまいます。

 

最後は、兄の祁鎮が皇帝に返り咲いたのですが、息子の見深に皇帝を譲り、殉死を免れて宮廷を離れた允賢を追って、再会しようとする所で終わります。

 

鍼、漢方、医食同源、祝由など興味深い場面が随所に出てきます。

 

初めて見た中国の連続ドラマは、韓国の東洋医学チャングムホジュンなどの時代劇に比べ、作り方は荒っぽいのですが、物語のテンポが早く面白いドラマでした。

                          おわり