東京都狛江市歴史探訪:古刹「泉龍寺」から「狛江古墳群」へ

 今回の散策は、わたしの家から比較的近い東京都狛江市です。この地域は、多摩川沿いに「狛江古墳群」があり、そこに古い寺院、神社があるので巡ってみました。

 散策コースは、小田急狛江駅から直ぐの「泉龍寺」から始まって、西の方へ「経塚古墳」、「兜塚古墳」そして「伊豆美神社」、そこから南下し「亀塚古墳」です。1寺院、1神社、3古墳を短時間で廻れる絶好のコースです。

 

 先ず「泉龍寺」ですが、1200年以上の歴史がある古刹です。狛江駅の北口に出て西側の弁天池通りを行くと程なく泉龍寺の山門です。

山号:雲松山

寺号:泉龍寺

宗派:曹洞宗

創建:天平神護元年(765)

開山:良弁(ろうべん)僧正

本尊:釈迦如来

 

縁起

 伝説によれば、奈良東大寺の開山として名高く、伊勢原雨降山大山寺をも開いた良弁僧正が天平神護元年(765)、この地にやってきて雨乞いをし、法相宗華厳宗兼帯の寺を創建したのが泉龍寺のはじめとされています。天暦3年(949)、廻国の増賀聖がこれを天台宗に改め、境内を開き、堂宇を建立しました。

 しかし、戦国時代に寺は荒廃し、草庵だけになり、旅の途中で立ち寄った桂破泉祝和尚が堂宇を建立し、曹洞宗の参禅修行道場として当寺を復興しました。

 

山門の左脇に、「不許葷酒入山門」の碑があります。

 禅宗の寺院の山門付近によく見かけます。葷とは臭いの強い野菜や酒を持ち込んではならない、その戒壇石と云われています。

 

泉龍寺山門

 この山門は、安政6年(1859)に境内の欅を使って再建されました。平成18年(2006)解体修理により銅板葺となっています。

 

山門から入ると参道が鐘楼門、本堂へと一直線に延びています。

 

鐘楼門までの参道の左側に、六地蔵、手水舎など、右側に延命子安地蔵などがあります。



左側の六地蔵と廻国塔。

 

手水舎

手水舎です。

 

龍の口から水が勢いよく流れています。心身を清めます。



参道左側のまわり地蔵としてよく知られる「延命子安地蔵」です。

 

そして、「草木供養塔」と「縁起碑」などが続きます。

 

珍しい二層式鐘楼門

 二層建ての鐘楼門です。天保15年(1844)に再建されたもので、彫刻も見事です。

 

2階の梵鐘です。

 

本堂

鐘楼をくぐると参道は、本堂に続きます。

 

 本堂です。本堂は宝永3年(1706)に再建されたものです。寺紋は、「九曜」で、正面上部や賽銭箱に見られます。

 

扁額は、「泉龍禅寺」です。

 

 本堂の周りには碑や灯篭が多数あります。

本堂前の見事な彫刻が施された石灯籠。

 

本堂手前の対の石灯籠。

 

十五世和尚力石と上村占魚句碑。

 

十三重石塔

 

その他境内

境内の西側には墓所が広がっています。

 

本堂の東側には、「泉龍寺仏教文庫」と書かれた近代的な建屋があります。

 

また、鐘楼門の脇にも石仏が並んでいます。

 

御朱印

 本堂と棟続きに庫裡がありますが、ここで御朱印を頂きました。

庫裡と玄関内部

 

 御朱印です。禅宗などで多く唱えられる念仏、「南無釋迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と書かれています。

 

弁財天池

 山門を出て東側の森の中に「弁財天池」があります。泉龍寺開山の良弁僧正が雨乞いをしたところ、竜蛇が現われて雨を降らし、その時に湧き出た「霊泉」が弁財天池だと云います。

弁財天池(『江戸名所図会』に画かれています。)

 和泉地名の発祥であり、泉龍寺という寺名も、この泉に因んだもののようです。

 

弁財天池です。魚が泳いでいて、祠もあります。

 

池の中島の石の祠に、弁財天が祀られています。

 

そして、池の水際に、聖観世音菩薩像が祀られています。

 

おわりに

 平日のせいか参拝者も少なく、高い木の多い境内は、静寂に包まれ空気感が違っていました。境内は、山門から鐘楼門、本堂と南北に整然と配置されています。気持よく参拝出来ました、ありがとうございます。

 江戸時代後期、この地は「江戸名所図会」「四神地名録」「遊歴雑記」など諸書に広く紹介され、現在の狛江市地域では唯一の名所になっています。

 泉龍寺が画かれた「江戸名所図会」です。

 図中央左上には「経塚」があります。経塚について図会には、昔、良辯僧都が寺の北東の小さな岡の上にお経を埋め、松を植えて印とした、という記述があります。

 図中央下右に「霊泉」があり、手前に「弁天」が見えます。

この「経塚古墳」も旧境内地でした。5世紀後半に築造された古墳です。近くにこのような歴史のある古刹があるとは思いませんでした。また機会を見て訪問しようと思います。

 

参考文献

泉龍寺公式ホームページ

狛江市公式ホームページ

現地説明掲示

                   以上