日本各地の寺院に、数多くの仏像があります。
その中には、その時代時代に意味があったと思われますが、現代では、少しおもしろい仏像があるのです。
例えば、本田不二雄氏著の『ミステリーな仏像』に載っているのですが、都内の妙見菩薩像が紹介されています。
ヘッドホーンで音楽を聴きながら、ピースサインしているというからおもしろい。
実際には、ヘッドホーンに見えるのは、日本古来の髪型で、中央でふたつに分け、耳の横でくくって垂らす、角髪(みずら)です。
またピースサインは、左手の第2指と3指を出して握る刀印で、妙見尊を標幟するもののようです。
先月、奈良国立博物館に行ったときに、「いのりの世界のどうぶつえん」という展覧会がありました。
ここにも、動物のおもしろ仏像が多数展示されており、子供にも楽しめるように工夫されていたのです。
数々の仏教美術の中から、「どうぶつ」を表し、描いた作品を選りすぐって、ご紹介しますというものです。
展示室では、仏教美術の中に息づく動物や、想像上の生き物たちが一堂に集まり、生き生きとした姿をみせ、ときに可愛らしいユーモアのある表情を見せてくれました。
彼らはなぜ、仏や神の住む世界にさかんに登場するのか、また日本で、仏教美術が本格的に生み出される以前に人々の「いのり」に関わる動物が、このように多数いるのが不思議です。
印象的なものを少し紹介します。
・大威徳明王騎牛像(だいいとくみょうおうきぎゅうぞう)
四肢を折って蹲(うずくま)る水牛の背に坐す、六臂六足(ろっぴろくそく)の大威徳明王像。五大明王のなかの一尊です。
明王ですが、全体的に穏やかな印象で、従順に蹲る牛が、いかにも、けなげで、可愛らしい。平安時代後期の作品です。
・岩手中尊寺 金銅華曼(こんどうけまん)
金色堂内に懸けられた荘厳具です。 国宝・金銅華曼(こんどうけまん)は、藤原時代の彫金工芸を代表するもので、金色堂内陣に飾られています。
天女と鳳凰が合わせた想像上の鳥、迦陵頻伽(かりょうびんが)。天女の顔がおだやかで可愛らしい。
うちわ形の金銅板金に宝相華唐草(ほうそうげからくさ)文様を透かし彫りしています。
・獅子像と牛像
どちらも真剣な眼差しで、険しい表情をしていますが、その険しさゆえに何となくおかしく、ユーモラスで可愛らしいのです。
古墳の被葬者(ひそうしゃ)のために、墳丘(ふんきゅう)や古墳の周囲に立て並べられた、動物埴輪の一種です。
他にも多数展示されていたのですが、親子が多数来ていて、大人にも子供にとっても、なかなか面白い企画展示でした。