渋谷区の散策で、前回は金王八幡宮でしたが、その旧別当寺で「東福寺」です。金王八幡宮から北へ直ぐ隣にあります。
御由緒
天台宗寺院の「東福寺」は、源義家が金王八幡宮と共に当寺を創建したと伝えられます。僧円鎮(養和元年1181年)開山となり、親王院と称しましたが、建仁2年(1202)当地の地頭渋谷高重が帰依したことから、渋谷山常照院円證寺と改めました。
山号:渋谷山
寺号:東福寺
都会の小さな寺院の山門です。車1台停まっていたので脇を通ります。
右の寺号標に、「渋谷山」と云う山号が刻まれています。
山門の脇に掲示板があり、東福寺梵鐘、木造薬師如来坐像、銅造菩薩立像(善光寺式阿弥陀如来脇侍)、木造不動明王立像が、渋谷区指定有形文化財で、その説明が書かれています。
本堂へ
山門を入り右へ行くと、真っ直ぐ本堂まで参道が延びています。
境内は、渋谷とは思えないほど緑豊かで静かです。
参道の右側には、水が流れています。
本堂です。
本堂の景観は、金王八幡宮と似た構図で、本堂の後ろの高層ビルとの対比が見事に調和しています。
本堂の正面です。扁額の文字は、山号「渋谷山」です。
見事な龍の彫刻が施されています。
本堂の前には地蔵菩薩などの石像が並んでいます。左手前に馬頭観音と、合掌地蔵尊が並んでいます。
馬頭観音は、石板に彫刻しており優しい表情です。
合掌地蔵菩薩像です。
右側には栄範地蔵尊、栄傳地蔵尊が鎮座しており、ともに東福寺の住職だった方です。左足を立てている半跏像は珍しいです。
石塔と地蔵菩薩像も並んでいます。
石塔の下に亀がいます。このような亀の形態が時々見受けられます。
境内の左側に卵型の無縫塔(むほうとう)が並んでいます。
その右に五輪塔のようです。
平安時代までのお墓は、「五輪塔」が基本でしたが、鎌倉時代に、「無縫塔」が禅宗の僧侶から持ち込まれました。
渋谷区有形文化財の鐘楼
参道左の中ほどに渋谷区有形文化財に指定された鐘楼があります。
境内の左側に宇田川地蔵尊のお堂があります。
傍に説明掲示板がありますが、それによると平成25年に、渋谷区宇多川町から遷座されました。
お堂の内部です。正面の地蔵尊像は、昭和37年造立ですが、右横にある像は、元禄元年(1688)に造立されたものです。
そのお堂の右に、江戸時代に大衆の間で流行した3基の庚申塔があります。
その右にもお堂がありますが、何のお堂かは分かりません。
御朱印を頂きに事務所に行きましたが、残念ながら扱っていないそうです。
寺務所
所感
境内は、渋谷とは思えない程、緑が豊かで手入れも行き届いています。境内の景観です。
コブが凄い「チシャノキ」です。
渋谷山東福寺は、約800年~900年前に創建された歴史あるお寺です。梵鐘は当時の姿を今に伝えています。本堂は、大正時代の完成したものですが、宇田川地蔵尊なども関東大震災、空襲などでは、渋谷区内の寺社が全て甚大な被害にあった中、無事であったようです。渋谷駅から数分というアクセスの良さもあり、金王八幡宮とともに一見の価値があるという寺院でした。
おわり